片平たてもの通信 第6號

【 片平たてもの物語 《6》 】
―東北大学金属材料研究所 本多記念館―

 大正8年(1919年)5月21日、工学部開設と日を同じくして、東北帝国大学附属鉄鋼研究所が設置された。附属研究所というのは、日本で唯一、特別の役割を果たすために設置された大学に附属する機関で、大正5年に前身の臨時理化学研究所が発足し鉄鋼研究所に発展したのが日本で最初である。
 これは所長を勤める本多光太郎らによる元素・金属・合金等についての温度・磁気に関する諸性質の世界的水準を行く研究業績によるもので、極めて異例のことであった。
 大正10年に住友家の援助を受けて赤煉瓦の本館建物が落成し、設備も整い研究業績が上がったことにより、大正11年には名称も現在と同じ金属材料研究所と改められ拡充がはかられた。
 所長の本多光太郎は研究指導に懇切熱心にあたると共に、昭和6年6月からは東北帝国大学の総長に就任し激務をこなした。そして、昭和11年本多総長の東北大学在職25周年を記念して計画された事業により建てられたのが、現在北門の斜め向かいに建つ本多記念館である。

 当時は、昭和12年「鉄鋼工作物築造許可規則」公布により軍需用以外の建物への鉄鋼使用が事実上禁止され、木造の建物しか建てられない状況にあった。
 このため、建築許可に手間取り昭和14年10月起工し、昭和16年10月にやっと落成した。
 建物のデザインは、付け柱が並ぶ彫りの深い窓や裏側から見た階段室が、以前に紹介した化学教室に良く似ており、既存の建物との調和に配慮したことが感じられる。
 近年、背後に増築された建物を解体すると同時に化粧直しがほどこされ、建設当時に近い姿で大切に使われているのを見ると、研究所関係者の先人に対する敬慕の念が伝わって来るようで嬉しく感じる。
たてもの通信編集部 佐藤智之
《データ》
  東北帝国大学金属材料研究所
  本多記念館
   昭和16年竣工
   設計者 不詳
   施工者 不詳
   構造 鉄筋コンクリート造 3階建
《参考文献》 
  「東北大学五十年史」
  東北大学 昭和35年
  「金研五十周年記念誌」
  東北大学金属材料研究所 昭和41年

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