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片平たてもの通信 第5號 |
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片平たてもの通信創刊1周年記念企画 【片平キャンパスは仙台のアイデンティティ】 |
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―東北大移転整備調査室・杉山助教授に聞く― |
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出身は静岡なんです。東北大学で建築史と建築意匠を学ぶために仙台に来ました。だから東北大は母校です。私の学生時代はもうすでに主なキャンパスが青葉山や川内に移ってましたから、当時の片平キャンパスってほとんど印象には残ってませんね。学生は時期が来たらその土地から去っていきますし。家庭を作って初めて生活者の視点というか、自分の住む街っていう意識が芽生えるのかもしれません。その後13年程、東京の建築設計事務所に勤め、図書館や美術館、病院、駅舎など公共建築を主に手がけていました。移転整備調査室に赴任したのは2年前の事です。整備室が設置されたのは私が来る数ヶ月前だったと聞いています。現在は片平地区と雨宮地区の大学施設を青葉山に移転するための様々な調査、例えば環境、交通、建物の配置、市民への大学の開放等について、つまりは移転する事に対して出てくるほとんどの問題を洗い出す仕事です。 少し前ですが、 建築学科3年の勉強の一環として、片平キャンパスの活用案を模型にする課題をグループごとに取り組んでもらいました。こうしてみると若い学生たちの価値観がはっきり見えて大変おもしろい。一例ですが、最近になって建てられた、お金がかかっている新しい建物は全て壊して、近代建築だけを残そう、という案とか。新しい施設はすべて地下に建設し、巨大地下街を造る。これのコンセプトは「仙台の名所を作りたい」のだそうです。また別の案では近代建築と現代の建物を共存させ、近代建築をつなぐジョイントとして現代建築を使ういわば連結案。古いのも新しいのも取りまぜて一体となって広場を形作ろう、という考えのようです。こうしてみると学生たちも仙台という大きな地図の中で片平をとらえているようです。 片平キャンパスは敷地面積が約23ha、それだけの広さがあるのに、現在片平キャンパスに勤務・または通学している教職員・学生は2千人ほど。大学全体の10%にも満たないんです。現在の片平は限られた人たちのための研究施設が立ち並び、場所の持つポテンシャル(潜在能力)を充分に活かしているとはとても言えない状態です。正直いってこの利用状況はもったいない限りです。仙台の都心にあるまとまった土地の活用としてももったいないし、なんとかしなきゃ、という思いは強い。この場所だからできる活用の仕方があるはずです。 片平キャンパスには近代建築が多数現存していて、仙台の中でも貴重な空間です。緑の樹木も多くて環境も申し分ない。片平キャンパスは学都仙台のアイデンティティでもあります。活用しない手はありません。仙台の名所となり得る場所です。それは今までここを大学が所有していて、お金がないという理由で建て替えが思うようにできなかったから、結果的にこういう状態で残った、と言えると思います。でもこれからは維持管理にお金をかけて意識的にやっていかねば近代建築の活用、ひいては片平の有効活用は難しい。それにはどうしたら良いのか、多くの人の知恵(とお金)を出し合って、片平キャンパス及びその近代建築を市民の財産としてきちんと継承していける方法について議論を深めることが必要な時期に来ていると思います。 将来は片平という土地の歴史的な経緯を生かし、知的かつ芸術的な教養を市民が広く学べる場になることが私個人の希望です。公園、文化施設だったらいいなぁ、と。その中で片平に大学の機能の一部を残す、大学の出張所とかサテライトキャンパスのような形がとれれば理想的だと思うのです。そうすれば大学発祥の地としての歴史が継承される。市民と大学のつながりも保てるでしょう。正直なところ、かつて大学の大部分の機能を青葉山・川内に移転させてしまい、研究施設のみを片平キャンパスに残した再配置計画が不思議でなりません。街中には1〜2年生が学ぶ教養部と実験施設が不要な文系(と図書館)などを残すのが妥当だったと思っています。ただし、これからの大学においては、文系、理系の枠を越えた様々な学問分野の統合や、新たな学問領域の創出が必要になってきますので、極力キャンパスは分離されずに一つにまとまっていることがとても重要な要素になってくるでしょう。しかし、片平キャンパスに現在の東北大学全体がすっぽりと収まることはとてもできそうにありませんね…。 仙台の建築についてですか?歴史的な建築以外で、つまり現代建築で好きなのは宮城県美術館くらいしか思い浮かびません。その他はみんな自己完結型といいますか、周囲の街並みや、自然環境との連繋を意識しているとはとても思えないデザインの建築ばかりです。それとこれからはエコデザインの観点を抜きにして建築は語れない、地球環境に対する配慮が欠けていては粗大ゴミになってしまうと考えたほうが良いでしょう。たとえば、南面も含めて外壁全体がガラス張りのビルなんて設計は簡単だけど、ガラスの清掃コストや多大な熱負荷による空調コストなど、維持管理に問題が多いうえに、表情も固く、取り付く島が無いと思いませんか? これからの建築を考えていく上で重要なのは、建物の建っている場所を外部も巻き込んでどのように活性化できるか、にかかっていると思います。建築がそれだけで閉じてしまわないで、いかに新しい人の流れを作り、活気を作り上げていけるか…そんな事を建物が出来た事によって実現しなければ、と思います。現代の建築も近代建築もその両方の良さを生かして活用する方法、ミックスする、ハイブリッドなやり方と言うんでしょうか。近代建築の活用についても、すべてを近代建築のやり方でまとめてしまわない方が、若い人にも年齢の高い人にも親しめる建築になると思います。そういったやり方で成功している例はたくさんある。私流の言い方をしますと「取り付く島のある建築」とでも表現できるでしょうか。近代建築はスケール(尺度)やディテール(造られ方)の面でも、人間にとって親しみやすい 。素材もそうです。現存する近代建築を活用し、その上で新しい建築を創造できれば…。歴史的な観点から言っても未来に残す価値のある現代の建築を作り出す必要がある。私はそんなふうに考えています。
杉山丞(すぎやま すすむ)
東北大学工学研究科助教授 都市・建築学専攻 取材:4月28日午後 文責:編集部 |
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