片平たてもの通信 第5號

【 片平たてもの物語 《5》 】
―東北大学 素材工学研究所1号館―

 東北帝国大学は明治40年、仙台の理科大学と札幌の農科大学という形で創設された。これは、帝国大学が単科大学ではなく、総合大学でなくてはならないためであった。しかし、遠距離の2つの大学を一緒にするには無理があり、また札幌農学校からの伝統を誇る農科大学は独立の可能性が予想された。(実際、大正7年に北海道帝国大学として独立)。そこで、仙台医学専門学校と仙台高等工業学校を大学附属の専門部とし、それぞれ医科大学と工科大学に発展させる構想が生まれた。これに沿って大正4年に医科大学が設置された。
 一方、工科大学の設置は、医専が医科大学設置によって実質上廃校のうきめをみたのを目の当たりにした工専関係者による、県・市の力を借りた反対運動により難航した。結局、大正7年に工専の存続が決まったことで、翌年5月に日本で最初の「工学部」が誕生した。(大正7年12月に大学令が出されて以降、「○○学部」という名称が使われた。)

 当初、工学部は工専から受け継いだ、木造2階建ルネッサンス様式の校舎を使用していたが、大正15年6月の火災で全焼してしまった。その跡地に昭和2年から昭和5年3月にいたる、2年半の工期で建てられたのが現在の建物である。この建物は、関東大震災後に建てられたせいか、どっしりとして窓の開口が小さく、工学部のイメージに似て、実用的で堅い感じがする。とはいえ、1階の窓や玄関にアーチが使われ、玄関上部中央の大振りな要石(キーストーン)やその上の歯飾り(デンティル)あるいは玄関ホールの円柱(オーダー)などに様式建築の手法が用いられており、玄関まわりは装飾的である。裏側の中庭に廻ると、1階部分に貼られた褐色のタイルと2、3階の白色のモルタルが調和して、落ち着いた雰囲気を醸している。特に、初夏は木々の緑と青々とした芝生に建物が映える時期でもある。
 天気の良い休日、散策に出かけてはいかがだろう。

たてもの通信編集部 佐藤智之
《データ》
 東北帝国大学工学部 機械電気教室・実験室
  昭和5年竣工
  設計者 不詳   施工者 石井組
  構造 鉄筋コンクリート造 3階建
《参考文献》
  「東北大学五十年史」     東北大学 昭和35年
  「東北大学工学部六十年史」財界評論新社 昭和54年
  「問わず語り」河合宇三郎著(自費出版) 昭和61年

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